スーパーカミオカンデで観測された大気ニュートリノを用いてローレンツ不変性の破れを探る

2015年04月07日

物理の法則は、それを観測している場所の向きと速度に依存しないことは、アインシュタインの相対性理論の基幹的な要素である。これはローレンツ不変性と言い、一定速度で走っている電車の中でボールを投げても、地上で投げた場合と同じ物理法則に従い、同じ軌跡で落下する理由となる。この不変性が幅広いエネルギーで様々な過程において保存されていることは、極めて高精度の実験結果で証明されている。このため、自然界の説明に大成功を収めている素粒子標準理論を含め、現在の物理学ではローレンツ不変性が中心的な柱となっていて、不変性からの逸脱(不変性の破れと言う)が確認されれば、我々の自然の理解へ大きな影響を及ぼすこととなる。

その一方、まだ標準理論に組み込まれていない唯一の力である量子重力理論は、ローレンツ不変性の破れを許すだけでなく、その存在を予言するかもしれないと考えられている。量子重力の影響が重大となると期待されるエネルギーは、宇宙誕生以来存在していない1019GeVであるため、ローレンツ不変性の破れが発見された場合、宇宙早期への洞察を与えることとなる。つまり、素粒子物理や宇宙物理にとってローレンツ不変性の破れの探索は重要な研究課題である。

興味深いことにニュートリノは質量が小さくその振動は干渉的なため、ローレンツ不変性の破れに高感度な道具である。標準的なニュートリノ振動が生むニュートリノの種類の変身は、飛行距離LとエネルギーEの比で決まっているのに対して、ローレンツ不変性の破れはLのみ、およびLとEの積に依存する変身をもたらすと考えられている。大気ニュートリノの飛行距離は10から1万キロ、エネルギーが10-1から105GeV以上まで渡り、大気ニュートリノ研究はLやEの依存性を調べるのにとても適している。今回スーパーカミオカンデにおける大気ニュートリノデータを用いて、ローレンツ不変性を破るニュートリノ振動の探索を、初めて近似でない期待効果を用いて行った。残念ながら、決定的な信号が見つからなかったが、既存の制限より三桁から七桁厳しい制限を与えるとともに、ある種のローレンツ不変性の破れに対して世界で初めて制限をつけることに成功した。

この結果はフィジカルレビュー誌に出版されて,同誌においる注目度の高い研究として取り上げられた。

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